昔々、千葉県は印材に「九番」という名のシマがあった。
いつの頃からか、草形状のビラビラ(ギリー)を上半身に纏った3匹の鬼が住み着くようになったという。
鬼達は、ビラビラの下にがっちりと甲冑(プレキャリ)を着込んでおったから撃たれても鳴くことはなく、更には意図的に撃った撃たれたがわかりにくくなる藪地帯のみに出没して、婦女子や初心者、良識あるゲーマー達から「不死(ゾンビ)の鬼3匹」はセーフティーやフラッグ前ではもっぱらの噂になっていった。

鬼達はここを定宿と定め、頻繁に出没して金を落とすものだから、地主様も他所に行ってくれとは言えなくなり、鬼達はルール無用の撃破数を自分達の実力と過信し始め、状況は悪化、心ある領民(ゲーマー)達はこの九番にはだんだんと寄り付かなくなっていった。

そんな時、とある戦士達の一団(にんじんぐん)が九番を訪れた。
戦士達は、1発では死なないギリー鬼達にも怯まず、鬼達の脳内ゲージがゼロとなってヒットコールが上がるまで戦い続け(でも、鬼の弾1発でも受ければ彼らは躊躇なく死を選んだ)、いつしか鬼達からも目の敵とされるようになっていった。
やがて、誰言うとなく「九番に巣食うギリー鬼を『ヒット』と鳴かせた者は勇者として認められ、死後は虹の橋を渡って永遠の豊穣な狩場に入ることができる」という伝承が生まれ、腕に覚えのある者はこぞってこのギリー鬼共のプレキャリの隙間や、肌が露出する箇所を的確に狙っては『ヒット』と鳴かせ、「何とか1ギリー撃破だ」「俺は2ギリーした」と、ギリーカウントを競うようになっていったという。

・・・と、のっけから昔話風(最近はファンタジー風とでも言った方がわかりやすいのかな)に書き出してみたが、ほとんど事実ってのがすごいことが起きている、と思った。

フィールド自体は最近数少ない森林系で、高低差も相まって変化に富んだ戦いができる。料金も¥2500と大変良心的(今みたいに有料フィールドが乱立する以前の標準価格)で、ポイントカードもやってるから10回くれば1回タダにもなる。
時々ブッ込んで来る「ローンレンジャー戦(何年前の映画だよ!)」だの「敵フラッグ回って写真撮ってくる戦(名前聞いてなかった)」みたいな不快ゲームさえ休んで回避しておけば、まあほぼほぼ外れのないフィールドだった。
連中がはびこるまでは。

一番の問題は、参加者達から何度申告があっても彼らを出入り禁止にしないフィールド運営側だ。
運営がやってくれないなら、ということであきらめて寄り付かなくなったゲーマー、ネットで噂を聞きここを敬遠するゲーマーが出始めたのだろう、我々が久しぶりに行った時は、ゲーム直前の説明タイムになってもまだセーフティの空きテーブルがそこここにあるような閑散ぶりであった。

なんだよヤケに人が少ないなー。いいフィールドなのに。

そう思っていた時期がありました。1ゲーム目が始まるまでは。

数ゲーム経過して、気がついた。
「ヤケにゲージ付き(1発でヒットコールの上がらないゲーマー)に遭遇するなあ」

セーフティーに戻って話してみると、「そうそう、毎回ブッシュ側を最前線にくるギリーの連中ですよ」

「!」

「ギリー・・・ あれか!」

ここで、そういえばそんな話を聞いていたことを思い出した。
そうか、奴ら今日もここにいるのか。

午前中も終盤に近く、メンバー中には戦意を喪失してしまった者もいた。
「弾と時間の無駄ですよ。自分達がヒットとるまでは、死ぬ気がないんだから」

だが、初心者率の高い今日の参加者構成からみて、我が人参軍以外では一方的に殺戮されるだけだろう。
我々なら奴等の「ゲージ」をゼロにし、ヒットを取ることができる。
奴等をフィールドから正規の手段で排除し、当地におけるサバゲを健全で楽しいものとし皆で遊べるようにしよう。
「故に、これより人参軍は敵ギリー共の侵攻が想定されるエリアに意図的に進出し、これを排除して友軍の遊戯を容易たらしめるものとする」
私は決断した。

「まあそうだよな、俺達しかできないもんな」

皆が理解するのに、時間はかからなかった。

かくして迎えた次のゲーム。
行動パターンは単細胞な連中なので、思った通りにブッシュ側を大急ぎで突っ込んでくる。
「来てるぞ。迎撃用意!」
遠めに移動している姿が見えたので、人参軍に下知。
すぐに、発見されにくい地形と有効に機能しそうな障害物を瞬時に判断し、伏兵体制に入る。

しょせんギリーなんぞ着ても、動いてしまえば無意味だ。
もっとも、奴等はそんな理由ではなく、単にゾンビ行為用のプレキャリ隠しとしてしか利用してないようだから、関係ないが。

そして、常態ゾンビに共通するのは、「索敵がヘタ」なことだ。
相手より先に見つけられないから、撃たせて反撃するんだろうな。威力偵察隊のT-34かよ。

射程には入ったが、発砲しない。
奴等のゲージを一気にゼロにするために、ギリギリまで近づかせる。

距離5m。
ブッシュハット中心に1発。
ピクリともしない。
直ちに狙点を下げ、ゴーグルへ・フェースガードへ。
こちらが3発撃ったところで、ようやく敵の弾が飛んできた。当たった以上はこちらはすぐにヒットコール。
(ちなみに当方の3発は全弾命中)

こちらのヒットコールの後に、奴もヒットコール。
ただ、かなりアツくなっているのがゴーグル越しの表情から読み取れた。ヨシヨシ。

ゲーム後にセーフティーで聞いてみると、他の同志達も似たり寄ったりでギリー共は全滅させた(ただし、当方も被害甚大)ことが判明。

こんなのを3回ほど続けてやった。
偶然出っくわすのではなく、意図的に狩りに行っていることが連中にもわかって来たようだ。

「奴等、明らかにこちらを意識してますよ。かなりムキになって仕掛けて来ます」

ふむ、それでよい。
フィールド運営さえ握りこんでしまえば何でも許されると思ったか、浅はかな連中め。
我々はあくまでルールを厳守し、かつお前達の悪行にも真っ向から立ち向かう。
本当の技量は、こういう時に使うものだ。

・・・などと言いつつ、我々もまだ発展途上、毎回当たるを幸い全ギリーなぎ倒すというには至らず、まあ勝率は5割をちょっと上回ったとは思うが、それでも抑止効果としてその任を果たせたのではないかと思う。

もしも後半、他のゲーマーが「あれ、そういえばギリー見なくなったな」と思ってもらえたなら、我が作戦は成功だったのだから。

しかし、もっと強くなりたいね。こんな2流連中相手なら百戦百勝できるくらいに。
その意味では我々は、我々を導いてくれた過去数多の先達に、まだまだ追いついていない。

人参解放軍公式HP「人参日報」
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