前回取り上げたアストラ・モデロFはモーゼルのガワを利用したらなんとなくカスタムできそうな感じだが、今回取り上げるテッポーはエアーガン化を自力でやろうとしたらかなり力技なフルスクラッチが必要になる。
とにかく似たテッポーってのが現行のモデルでないのだ。
無理したらMP40かも知れないが、それでも大幅に自作パーツが必要になることは間違いない。

何でそんなのを取り上げるのかって?

別に、キワモノだからテーマにした訳じゃない。
寧ろ、良く考えられてると思うところ多数。
その割に不遇なのは、出自がハンガリー産だからだろうか。
その知名度の低さに反し、とにかく面白い銃なことは間違いない。

今回紹介するのは、ダヌビア43M。
設計者の名前から、キラリ(某日本偏向放送協会の朝ドラみたいだな)とかキラーイ43Mと呼ばれることもある、ハンガリーのSMGだ。
ちなみにダヌビアってのは製造所の名前から(オートバイ工場だったらしい)。

外観は、おおよそSMGらしからぬ古典的なデザインをしている。
そもそもがまず大柄だ。初めて写真で見た時、小型ライフルかと思った(まあ、当時のSMGってプチ機関銃だからライフルっぽいんだけどね)。
全長はストック畳んだ状態で749mm。

文字で表現すると、マガジンハウジング付近がもっとも太く、前がテーパーで細くなり、後ろはそのまま延長する感じだが、取って付けたようなピストルグリップがついている。これがまたグリップのローレットとかが南部14年式っぽい横線何本か、って感じで実に後付けやっつけ感がある。

こんな感じで、バレル前方以外はほぼ全面を木製ストックというかハンドガードというか、でカバー。

ストックは折り畳み式なのだが、銃本体下部にほとんどツライチで薄く納まる。
その上、ストックバーにも木製のカバーが細ーく付くという拘り様。
なんでも頬当てを考慮した人に優しい設計とかなんとか。

その他特徴的なのは、セミ・フル切り替えとセーフティが1レバー(と言っていいのか?)なんだけど、その位置がグリップとかトリガー周辺ではなく、レシーバー後端にある。
三八式歩兵銃(まあモーゼル98系でも可)の安全装置を想定してもらえばいい。
あそこにあって、回転角によってセーフ・セミ・フルの切り替えになる。
ちなみに表示は「セーフティ=Z」「セミ=E」「フル=S」だ(ハンガリー語のため)。

使用弾は9mmなのだが、みんな知ってる9パラではない。
9mmエクスポートという、モーゼルが自社拳銃用に開発した弾薬だ。
これは9mmパラペラムよりも装薬量が多く、従って弾頭威力も大きい。
数値で比較すると、9パラが9×19mmなのに対し、9エクスポートは9×25mm。
元々はモーゼルが「7.63mm?豆鉄砲みたいですなあ」と言いそうな大口径信奉者の顧客向けに独自開発した9mm弾で、実はモーゼルC96の結構初期から既にラインナップにある弾頭だ。
ハンドガンで使用するにはオーバーパワーと言われ、モーゼルのマーケティング的にはあまり人気のなかったこの弾薬だが、銃本体が重く大きく保持のしやすいSMGでは逆に高威力を発揮でき、ダヌビアとの相性も良かったといわれている。
独ソ戦でご一緒した隣のドイツ軍から「MP40よりそっちが良い」と言われたそうな。
一部ドイツ軍でも使っていたとか。

発想的には、米軍のM1カービンに近い。
拳銃弾よりハイパワー、でもライフル弾より弱装で、手持ち自働火器としての有効性を追求する。
「突撃銃の祖」・MP44以前に同様のコンセプトを求めた、1つの形だったのではないだろうか。

特徴は外観と使用弾だけじゃない。
外観の説明で「マガジンハウジング部が一番太い」と言ったが、これには理由がある。
なんと、銃にマガジンを取り付けたまま前方にマガジンを畳むことができるのだ。
って聞くと、MAT-49とかSIGのMKMSが想起されるんじゃないだろうか。

「SIGのMKMS?知らん!」って人は、幼女戦記のデグさんの銃(元々はスーさんのだが)と言えばもうおわかりだろう。

実は、MKMSとダヌビアは設計者が同じなのだ。
そう、どっちもキラリさんなのである。
(ちなみにこの人、戦後南米に渡ってまた面白い銃を設計するのだがそれはまたこのシリーズで紹介するつもりなので今日は触れないヨ)

我々は銃器設計者というと、1にブローニング、2にモーゼルだったりコルトだったりカラシニコフだったりが出てくると思うけど、このキラリも特徴あるテッポーを数多く残している。
でもヒット作が何故かないんだけど。

そうそう、外観の説明で取り上げたのは折り畳みストックの43M(だってこのストックがまた面白いんだモン)だが、同モデル名で固定ストック版もある。ちなみに先代の39Mは折り畳みストック版が「39M/A」で。固定ストック版と名称が異なる。

結局、総生産数は約8,000丁と誠に少なく、戦後共産化(ソビエト衛星国化)の流れでハンガリーの正式SMGはPpsh-41を採用することになり、残っていたのも廃棄されたため現存するのは数十丁くらいしかないらしい。
そんなこんなだから、如何にゲテモノ好きな中華電動でもこれのモデル化は望めないだろうなあ。
(デグさん銃ってことで、MKMSだったらワンチャンあるかも知れないが)

余談ながら、東欧の兵器って独特のセンスがあって個人的には見ていて飽きない。
戦車でも傑作38t(チェコ・ただしチェコ自身は東欧じゃなくて中欧って呼んで欲しいらしい)とか、マレシャル駆逐戦車(ルーマニア・ヘッツァーの元ネタとかドイツがパクったとか言われる軽駆逐戦車)とかあって、なかなか楽しい。
更なる脱線だが、マレシャル駆逐戦車はガルパンのスピンオフ漫画で出てくるのがあるそうだ。

ハンガリーは2次戦後もトカレフの自国改良FEGとかエジプト輸出向けカスタム「トカジプト58」とか製造していたりして、そのアクの強さは健在なようだ。
さすがは欧州の中でも異色な、騎馬民族の独自文化を今に継承ってところなのだろうか。

人参解放軍公式HP「人参日報」
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